Q&A
産業廃棄物の処理を委託する場合の、マニフェストの不備とはどんな例がありますか?
マニフェスト(産業廃棄物管理票)については、事細かく規定されており、基本的には「これらの事項に一つでも違反したら不備」となります。
- 産業廃棄物を委託するときはマニフェストを交付しなければならない(法第12条の3第1項)
- 交付の時には交付年月日や荷姿など11項目を記載しなければならない(省令第8条の21第1項)
- マニフェストの写しを5年間保存しなければならないこと(法第12条の3第2項省令第8条の21の2)
- 所定の日限まで「写し」が返ってこないときや虚偽のマニフェストが返ってきた時などは知事に報告しなければならない(法第12条の2第8項)
等の規定があります。 このうち「不交付」「虚偽交付」「不保存」については、罰則(最高刑懲役6ヶ月、罰金50万円)がありますから、委託した産業廃棄物が「物理的に適正に処理」されたとしても、この罰に処せられる場合があります。 ケアレスミス程度の記載項目の抜け落ち、誤記なら、直接の罰則はありませんが、社会常識的に言って白紙に近い状態での交付は前述の「不交付」と捉えられる場合もあります。 また、委託した産業廃棄物が不法投棄等された場合は、法第19条の5の適用を受け、排出事業者にも措置命令がかけられる場合があります。
マニフェストに記載する11項目
マニフェストに記載する義務のある11項目は以下のとおりです。(9)と(10)は中間処理業者が記載する項目ですので、排出事業者の方は記載不要です。
- 管理票の交付年月日及び交付番号
- 氏名又は名称及び住所
- 産業廃棄物を排出した事業場の名称及び所在地
- 管理票の交付を担当した者の氏名
- 運搬又は処分を受託した者の住所
- 運搬先の事業場の名称及び所在地並びに運搬を受託した者が産業廃棄物の積替え又は保管を行う場合には、当該積替え又は保管を行う場所の所在地
- 産業廃棄物の荷姿
- 当該産業廃棄物に係る最終処分を行う場所の所在地
- 中間処理業者(次号に規定する場合を除く。)にあつては、交付又は回付された当該産業廃棄物に係る管理票を交付した者の氏名又は名称及び管理票の交付番号
- 中間処理業者(当該産業廃棄物に係る処分を委託した者が電子情報処理組織使用事業者である場合に限る。)にあつては、当該産業廃棄物に係る処分を委託した者の氏名又は名称及び第八条の三十一の二第三号に規定する登録番号
- 当該産業廃棄物に石綿含有産業廃棄物が含まれる場合は、その数量
一般廃棄物や有価物にマニフェストを使ったら・・・?
マニフェストは正式名称「産業廃棄物管理票」というくらいですから、産業廃棄物だけに適用されるものです。 時折、一般廃棄物や有価物についても、「マニフェストを交付している」という方がいらっしゃいますが、本来、「廃棄物処理法に定める産業廃棄物管理票ではない」ことを明確にしておくべきでしょう。
もちろん、一般廃棄物であっても、排出事業者、収集運搬会社、処分(受け入れ)会社が産業廃棄物にならって、適正処理をするために相互に承諾しあって、そのやりとりを「産業廃棄物管理票」と同じ様に使用することを否定するものではありません。
要は、ごまかし行為が多い廃棄物委託処理について、いかに公明正大に処理ルートを確認していくか、が大切なことと思います。 ただ、前述のように「一般廃棄物にも産業廃棄物管理票を使用」となると、本来、産業廃棄物処理業者には委託できない一般廃棄物を、(一般廃棄物処理業としては)無許可業者に委託している事態になっていないか、注意が必要です。
また、「マニフェスト」という言葉自体が法令の正式名称ではありませんから、「一般廃棄物マニフェスト」「有価物マニフェスト」と使用していても構いません。廃棄物処理法上は「単なるメモ紙」という扱いになります。
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執筆者プロフィール
長岡 文明(ながおか ふみあき)
株式会社アミタ持続可能経済研究所 特別顧問
山形県にて廃棄物処理法、廃棄物行政、処理業者への指導に長年携わり、行政内での研修講師も勤める。2009年3月末で山形県を早期退職し、廃棄物処理法の啓蒙活動を行う。廃棄物行政の世界ではBUNさんの愛称で親しまれ、著書多数。 元・文化環境部循環型社会推進課課長補佐(廃棄物対策担当)
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